2025年9月、CPAエクセレントパートナーズ株式会社は、国内男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」のキャリアマネジメントプロジェクトパートナーに就任いたしました。このプロジェクトは、会計ファイナンスのスキルを中心とした「学びの支援」にとどまらず、プロアスリートに備わっている無限の可能性を解き放つことで、スポーツビジネスの持続的な発展に寄与することを目指しています。
そして今回は、本パートナーシップの締結を機に、B.LEAGUEの島田慎二チェアマンと、CPAエクセレントパートナーズ代表の国見健介による特別対談を実施。スポーツのプロリーグに期待される「感動」に「ビジネス」の視点が不可欠な理由、次世代のリーダー育成に必要な戦略について、情熱的かつ建設的な議論が交わされました。会計ファイナンスの力で描かれるスポーツ界の壮大な未来図を、対談の全容とともにお届けします。
B.LEAGUEの情熱とCPAのミッションが共鳴した瞬間
――まずは国見さんに質問です。CPAエクセレントパートナーズは、2025年4月にJリーグとサポーティングカンパニー契約を締結したように、スポーツ界を対象にした「会計ファイナンス人材の輩出」に注力してきました。今回、B.LEAGUEのキャリアマネジメントプロジェクトパートナーに就任した背景について、改めて詳細をお聞かせください。
国見 もともと私たちは公認会計士の育成に特化したスクール事業を柱としてきましたが、2020年10月に無料学習プラットフォーム「CPAラーニング」の展開を始めたことがひとつの契機になりました。シングルマザーのリスキリング支援などを行い、専門家以外にも知識を提供することの社会的意義を強く実感するようになった経緯があります。
この活動を拡大させる過程で、Jリーグ参入を目指すクリアソン新宿のビジョンに共感して、約33年前にパートナーシップを締結。そこでスポーツ界との接点が生まれました。さらにJFA様(日本サッカー協会)とも連携させていただき、アスリートのキャリア支援に取り組む中で、現役選手やクラブスタッフに向けて会計ファイナンスの知識を学ぶ機会を提供することに明確なニーズがあることを確認しました。
その後、知人を介した会食で島田チェアマンにお会いしました。バスケファンの方々はご承知だと思いますが、島田さんはB.LEAGUEのビジネスモデル改革に尽力してきた存在であり、選手やクラブスタッフに対しても経営やキャリアマネジメントを積極的に学んでほしいと考えておられる。その根底にある熱意は、まさに我々が推進してきた「人の可能性を広げる」という取り組みと深く共鳴するものでした。ですから「ぜひ協力させてください」と、迷いなくパートナーシップを締結させていただいた次第です。
――島田さんはCPAエクセレントパートナーズとのパートナーシップにどんな意義を見出しておられますか?
島田 大前提として、多くのアスリートと同じように、バスケ選手も現役でいられる時間は長くありません。40歳を過ぎても現役を続けられる選手はひと握りですし、引退後も数十年と続く長い人生を豊かに過ごすためには、幅広い知識を身につけておく必要があると思っています。
バスケ選手の場合、チームの公式練習は1日2時間ほど。それ以外の時間を「学び」に費やし、もともと備わっているアスリートとしての特別な経験値にビジネスの知識を付け足すことができれば、引退後に選べるキャリアプランが広がっていくでしょう。CPAさんとの取り組みでは、そういう機会を作っていきたいと考えています。
――邪推かもしれませんが、「いやいや、現役選手は後先を考えず、競技のスキルアップだけに全集中すべきだ」というスタンスの方もいそうです。しかし、島田さんは、「セーフティーネットを築くこと(学びを通じて引退後の準備を整えること)」が、現役選手のパフォーマンス向上に寄与するとお考えですか?
島田 まさに後者の考え方が正しいと信じています。年俸数十億を稼ぐようなトップ選手であれば、引退後の生活を心配する必要はないかもしれません。しかし、ほとんどの選手はそうではありません。「引退したらどうしよう」という漠然とした不安を抱えたまま、目の前のプレーに100%集中できるでしょうか? 私は難しいと思います。
むしろ、自分の中に確固たる後ろ盾があり、引退後の具体的なキャリアプランを描けている。その安心感があるからこそ、将来への不安から解放され、今この瞬間の競技に集中して身を投じることができるようになるのではないでしょうか。
国見 私も同感です。将来像を明確に描くことができれば、漠然とした不安が消え、今やるべきことに集中しやすくなりますよね。さらに言えば、スポーツビジネスの「仕組み」を理解することも選手のパフォーマンスに好影響を与えると思っています。
スポーツは、単に選手が試合で結果を出すだけで成り立っているわけではありません。応援してくれる「ファン」がいて、選手を支える「チーム」がある。そうした様々な要素が一体となって、スポーツ界全体が回っています。
この仕組みを深く理解できれば、選手としても、自分自身の価値を最大化するための、多様な視点が得られるのではないでしょうか。例えば野球の新庄剛志さんのように、プレーの成績(本業)だけでなく、ファンを喜ばせるパフォーマンスにも力を入れるなど、幅広い形でチーム全体に貢献するという道も見えてきます。
アスリートの人生とクラブ経営に光を灯す知識武装
――選手が会計やファイナンスの知識を学び、例えば所属クラブの決算書を読めるようになると、その後のキャリアにはどのような可能性の広がりが生まれるでしょうか?
島田 まず、自分の収入と支出をどう管理するかという「個人」の視点が養われます。さらに重要なのが、給料の源泉であるクラブの運営がどう成り立っているかを理解する「経営」の視点です。B.LEAGUEでは全チームの決算書公開と監査が義務付けられていますから、クラブの収益構造、つまりスポンサー収入に依存しているのか、チケット収入でファンに支えられているのかが、数字として明確に分かります。
そうした実態を理解することで、スポンサーの存在意義や、ファンからの支援の本当の価値が、より実感できるようになるはずです。「何となく応援してくれているファンへの感謝」が、「自分たちのプロ活動を、これだけの収益で支えてくれている」という、リアリティと数字に基づいた感謝へと変わるのです。選手たちがより成熟し、「自分たちはビジネスの関わりの中でプロ生活を送っているのだ」という当たり前の事実を、はっきりと認識できるようになる。それが最大の収穫だと思います。
国見 そうですね。そうしたビジネスや会計の理解が現役時代から広がっていくと、競技生活にも、引退後のキャリアにも、文字通り「全てに生きてくる」と思います。そして私は、今回の取り組みがより浸透していけば、アスリートのキャリアだけでなく、日本の「新卒一括採用」という仕組み自体が変わっていく可能性すら感じています。
海外では、大学卒業後、さらに専門知識を学んでから就職したり、30歳になってから大学院で学び直したりすることが主流です。日本はまだ大学からすぐ就職するパターンが多いですが、30歳や35歳からでも、その先のキャリアは30年、40年と続きます。一度立ち止まって学び直し、キャリアを広げていくという流れは、今やアスリートだけでなく日本全体に必要な視点ではないでしょうか。
これまでのアスリートのセカンドキャリアは、競技関係の仕事、飲食店の開業、あるいはコミュニケーション能力を活かした営業職など、どこか限られたルートが多かったように思います。しかしこれからは、「全職種から選んでいい」という時代になっていきます。30歳からキャリアを大きく変えることが、ごく当たり前になっていくはずです。
――島田さんは、会計ファイナンス知識の習得によって、選手やクラブ関係者がどのような役割を担っていくことを期待されていますか?
島田 引退後の進路として、指導者やチームを作るGMなど、バスケットボールに直接関わる道はもちろんあります。しかし、B.LEAGUEはまだ発足から浅く、これから多くの選手が引退を迎える中で、ビジネスサイドに進む道はまだ十分に整備されていません。
私たちもバスケ界で活躍できるキャリアの受け皿を用意しようと努めていますが、まだ足りていないのが現状です。だからこそ、選手自身に勉強していただき、選択肢を増やしてほしい。会計ファイナンスの知識や、社会人としての基礎を学ぶことは、バスケ界に残るにせよ、異業種に進むにせよ、引退後の安定した生活を支える強力な武器になります。
また、視点を変える必要もあります。現在、私のようなリーグの経営ポジションは、ビジネス側からスポーツを捉えている人間が務めています。今後はその逆、つまりアスリート側からビジネスを学び、競技を深く知る強みを活かして、こうした経営ポジションに就く人がどんどん出てきてほしい。それを強く期待しています。
クラブのスタッフについても、言うまでもありません。彼らはスポーツをビジネスとして成功させなければならない立場です。営業、チケット販売、ファンクラブ運営など、どんなマーケティング手法を使うにせよ、会計ファイナンスの知識はその土台となります。「売上(トップライン)を上げる」ことだけを考えるのではなく、「経常収支(ボトムライン)がどうなっているか」という経営視点を持つためにも、今回の取り組みは不可欠です。
国見 B.LEAGUEはこれから各クラブがアリーナ経営といった、より大きな事業にも取り組んでいくでしょう。巨額の投資を行い、長期的な採算性を見据えながら、スポーツ以外の分野とも連携し、アリーナスタジアムを核に地域を盛り上げていく。そうした未来を実現するには、関わる全員が会計ファイナンスの最低限の知識を持つことが大前提となります。
島田 おっしゃる通りです。公認会計士や税理士の資格を今から取得するのは非常に難易度が高い。しかし、資格の有無に関わらず、勉強をして一定の知識を持っているかどうか。それ自体が、今後非常に重要になってくると確信しています。